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甲状腺濾胞癌の術前診断の可能性

No.4771 (2015年10月03日発行) P.54

鈴木 悟 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学教授)

登録日: 2015-10-03

最終更新日: 2016-10-26

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甲状腺濾胞性腫瘍はありふれた疾患である。甲状腺結節は,良悪性の診断に穿刺吸引細胞診(FN
AC)が用いられることが多いが,濾胞癌は,その病理学的特徴からFNACでは診断不可能であり,現在,診断には切除が必要である。比較的良性の経過をたどる場合が多いが,遠隔転移を伴うものもあるため,数多く認められる濾胞癌の術前診断は,臨床的に重要な意味を持つ。濾胞癌に特異的な遺伝子変異は明らかにされていないが,PAX8/PPARγ遺伝子再配列との関係がいくつか報告されている。これら遺伝子変異のみならず,乳頭癌を含めた甲状腺癌特異的遺伝子変異は数多く報告され,この遺伝子検索を判断の一助にするべく,最近検討が重ねられている。
細胞診病理診断の後,乾燥標本からPCRを用い,主にシークエンス検索する方法が開発されている。同じ変異検索でも,悪性の診断評価(ruling-in)と良性結節診断評価(ruling-out)の2通りに利用できる。ruling-inでは,様々な施設で再現性のあるデータが出はじめている。それに対し,ruling-outは,さらに個別的な研究が必要である(文献1)。ある報告では濾胞癌診断の感受性は細胞診単独に比し60%から80%に上昇した。一方,病理診断では28%に悪性のリスクを認めたが,遺伝子変異陽性では71%に上昇し,陰性では18%に低下した(文献2)。
改善の余地はまだあるが,従来の病理学的検索に加え遺伝子検索結果を加味すると,超音波による弾性イメージング評価の方法に加え,濾胞癌の術前診断が近い将来可能になるかもしれない。

【文献】


1) Eszlinger M, et al:Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2014;28(4):545-57.
2) Eszlinger M, et al:Thyroid. 2015;25(4):401-9.

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