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骨髄異形成症候群に対する分子標的療法の進展

No.4773 (2015年10月17日発行) P.51

原田浩徳 (順天堂大学血液内科准教授)

小松則夫 (順天堂大学血液内科主任教授)

登録日: 2015-10-17

最終更新日: 2016-10-26

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骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome:MDS)は,無効造血による汎血球減少と前白血病状態を特徴とする造血器腫瘍のひとつである。高齢者に多いため,根治療法である造血幹細胞移植術の適応は限定的で,数年前までは輸血などの支持療法しかない難治性疾患であった。しかし近年,複数の新規薬剤が臨床適応となったことで治療戦略が大きく変化した。
免疫調節薬(immunomodulatory drugs:IMiDs)のレナリドミド,DNAメチル化阻害薬(DNA demethylating agent:DMA)のアザシチジン,赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis-stimulating agent:ESA)のダルベポエチン アルファ,そして鉄キレート剤のデフェラシロクスによる治療が行われている。
MDSは不均一な疾患群であり,病型に応じた治療方針を選択することが重要である。主症状の貧血に対する輸血の補助療法であるESAや鉄キレート剤は,輸血依存度軽減や鉄過剰症回避によって予後の改善につながる。
MDSの基本的な治療は,異常クローンを抑制し,有効な造血を回復させることが主体であり,白血病治療で行われてきた殺細胞的な化学療法とは異なる。IMiDsやDMAは分子発症機序に基づいた薬剤であり,生存期間の延長や白血病への移行の抑制効果がある。
現在,これら薬剤の治療抵抗症例に対する治療戦略が課題となっているが,MDSの網羅的な遺伝子解析の結果,多数の責任遺伝子が同定されたことから,個々の異常に対する分子標的療法の開発が急速に進んでいる。

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