t-PA静注療法は,発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞に対し有効性が確立された重要な治療法である。しかし,内頸動脈や中大脳動脈近位部急性閉塞などの特に重症な脳梗塞には,奏効率が低いことが1つの問題である。近年のランダム化比較試験から,このような部位の急性閉塞に対してはt-PA静注療法に脳血管内治療による血栓回収の併用が有効であることが示された(文献1)。発症からt-PA静注療法開始までの時間は,脳梗塞の転帰に影響する大きな因子である。また,発症から再開通までの時間が,重症脳梗塞の転帰に影響する大きな因子である。包括的脳卒中センターは限られるため,一次脳卒中センターで速やかにt-PA静注療法を開始し(drip),そして包括的脳卒中センターへ搬送(ship)し,t-PAにより再開通が得られない場合に備えることは有効な手段と考えられる。脳血管内治療だけでなく,重症脳梗塞に包括的脳卒中センターで全身管理を行うことが,転帰を改善することも示されている(文献2)。
t-PA静注療法は出血性合併症のリスクがあるため,脳神経外科手術が可能であることなどの施設基準がある。そのため,t-PA静注療法は脳梗塞患者の5%未満にしか行われていないのが実状であり,有効な治療の恩恵を受けることができていない脳梗塞患者が多いことも問題である。drip & ship treatmentは,この面においても1つの解決策になるものと期待されている。
1) Berkhemer OA, et al:N Engl J Med. 2015;372(1):11-20.
2) Tekle WG, et al:Stroke. 2012;43(7):1971-4.