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JAK2阻害薬による骨髄増殖性腫瘍 の治療 【ルキソリチニブでは治癒は期待できないが,全身症状の軽減やQOLの改善が認められる】

No.4779 (2015年11月28日発行) P.50

小松則夫 (順天堂大学血液内科主任教授)

登録日: 2015-11-28

最終更新日: 2016-10-26

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1951年,Damshekによって提唱された古典的骨髄増殖性疾患〔WHO分類2008では骨髄増殖性腫瘍(MPN)に名称が変更〕のうち,慢性骨髄性白血病(CML)を除く真性赤血球増加症(PV),本態性血小板血症(ET),原発性骨髄線維症(PMF)の3疾患に共通の遺伝子異常,すなわちJAK2-V617F変異が2005年に発見された。これを契機にJAK2阻害薬の開発競争がスタートし,これまでに数種類のJAK2阻害薬の臨床試験が行われている。
現在,日本で使用可能な薬剤はルキソリチニブ(ジャカビR)である。CMLにおけるチロシンキナーゼ阻害薬とは異なり治癒は期待できないが,脾臓容積縮小効果,全身倦怠感や発熱,体重減少,盗汗,掻痒感などの全身症状の軽減,QOLの改善を認めている。最近では全生存期間の延長も示唆されており,一部の症例では骨髄線維化の改善も認めている。
一方で,貧血や血小板減少などの血液毒性が高頻度にみられ,免疫抑制による日和見感染症の発症やB型肝炎ウイルスの再活性化,播種性結核症,帯状疱疹,急な服薬中止による離脱症候群の発症も報告されている。ヒドロキシカルバミド耐性・不耐容のPV患者を対象に行われたRESPONSE試験では,ルキソリチニブ投与によって脾臓容積縮小とヘマトクリットの減少効果を認めており,2014年12月に米国でヒドロキシカルバミド耐性・不耐容のPV患者を対象に効能が追加承認され,日本においても2015年9月に承認された。

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