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心外膜下脂肪組織と動脈硬化 【EAT容量による冠動脈リスク層別化は可能か?】

No.4780 (2015年12月05日発行) P.52

北川知郎 (広島大学病院循環器内科)

木原康樹 (広島大学病院循環器内科教授)

登録日: 2015-12-05

最終更新日: 2016-10-26

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肥満患者の脂肪組織ではマクロファージ浸潤などの炎症が惹起されており(文献1),脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインと冠動脈硬化症との関連も報告(文献2)された。心臓に密着する内臓脂肪である心外膜下脂肪組織(EAT)も,炎症やケミカルメディエーター放出を通して冠動脈へ直接影響を及ぼし,冠動脈硬化症の病態形成に大きく関与している可能性が指摘されている。
Hirataら(文献3)は免疫組織学的検討から,冠動脈疾患症例でEATのマクロファージ浸潤および炎症性サイトカイン発現が有意に亢進していると報告した。一方,CT画像を用いた研究で,EAT容量と冠動脈石灰化スコアが正の相関を呈するとの報告(文献4),さらにEAT容量が冠動脈プラークのハイリスク性状(低CT値,陽性リモデリング)と関連するとの報告(文献5)もあるが,最近の大規模研究ではEAT容量と冠動脈石灰化の有無とスコアとの相関性は確認されず(文献6),現状ではEAT容量による冠動脈リスク層別化の確立には至っていない。今後の組織学的解析を含めた検討により,悪玉内臓脂肪としてのEATの病的意義の解明,さらにその病原性を軽減するための臨床アプローチの確立が求められる。

【文献】


1) Weisberg SP, et al:J Clin Invest. 2003;112(12):1796-808.
2) Kumada M, et al:Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2003;23(1):85-9.
3) Hirata Y, et al:J Am Coll Cardiol. 2011;58(3):248-55.
4) Yerramasu A, et al:Atherosclerosis. 2012;220(1):223-30.
5) Oka T, et al:Int J Cardiol. 2012;161(1):45-9.
6) Tanami Y, et al:Circ Cardiovasc Imaging. 2015;8(3):e002676.

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