褥瘡は,基礎疾患の存在と相まって難治となりやすく,創管理を慢性創傷の概念のもとで行う必要があり,特に骨や靱帯などの露出を伴うステージⅣでは,wound bed preparationによる創環境の改善が重要となる。
2010年に「局所陰圧閉鎖処置」の名称で保険収載された局所陰圧閉鎖療法(negative pressure wound therapy)はその代表的手段のひとつであり(文献1),創の適切な湿潤環境と安静を保ちつつ,陰圧という機械的刺激により組織反応を惹起して,良好な肉芽形成と創収縮,ポケット縮小が期待できる方法で,これのみで創閉鎖へ導いたり,術前の準備として用いられている。最近では,外来通院で使用可能な携帯型器材も承認されている。
上記のような侵襲の少ない治療法のうち,ほかの選択肢として,無水エタノールによる硬化療法が報告されている。骨露出や壊死組織がなく,縫縮できる程度の瘻孔を有する褥瘡に適応が限定されるものの,侵襲が少なく再発例にも繰り返し施行できる点で有用性が高い(文献2)。
皮弁による外科的治療が積極的に行われ,再発防止の観点から知覚皮弁なども用いられてきた本症であるが(文献3),発生予防において,患者個々に対するリスクマネジメントが重要なように,治療においても多様な手技を念頭に置いた個別の治療計画の策定が肝要である。
1) 大浦紀彦, 他:形成外科. 2009;52(8):903-12.
2) Hayashi T, et al:Ann Plast Surg. 2004;53(6):554-9.
3) Kimura H, et al:J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2013;66(2):239-42.