2011年にC9orf72遺伝子イントロン1内の6塩基(GGGGCC)繰り返し配列の異常伸長が,白人の家族性・孤発性の筋萎縮性側索硬化症(ALS),前頭側頭型認知症(FTD)で最も頻度の高い原因遺伝子として同定された(文献1,2)。欧米では家族性ALSの21~57%,孤発性ALSの3~21%であった。わが国の報告では,家族性ALSの2.8%,孤発性ALSの0.4%を占め,紀伊半島南部のALS多発地域では20%と高率であった(文献3,4)。また,わが国で報告されている発端者の1人の家系で同胞に進行性失語症患者の存在が判明し,6塩基繰り返し配列の伸長を認めていたことから,同一の遺伝子変異で異なる臨床型を示す患者の存在が確認された。
この遺伝子異常による病態の機序は,(1)異常伸長によるC9orf72の発現低下,(2)異常伸長反復配列mRNAへの核内RNA結合蛋白異常集積,(3)異常伸長反復配列からdipeptide repeat protein(DRP),poly glycine-alanine(GA),poly glycine-proline(GP),poly glycine-arginine(GR)のnon ATG翻訳とDRPの蓄積が推定される(文献5)。C9orf72のさらなる解析により,家族性・孤発性のALS/FTDの病態解明と治療の発展が期待されている。
1) Renton AE, et al:Neuron. 2011;72(2):257-68.
2) DeJesus-Hemandez M, et al:Neuron. 2011;72(2):245-56.
3) Ogaki K, et al:Neurobiol Aging. 2012;33(10):2527.e11-6.
4) Konno T, et al:J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2013;84(4):398-401.
5) Yamakawa M, et al:Hum Mol Genet. 2015;24(6):1630-45.