学童近視の進行予防には光学的方法と薬物療法がある(文献1)。眼鏡やコンタクトレンズを用いる光学的方法は,網膜後方へのデフォーカスを取り除くことで,薬物療法は網膜の神経伝達系を遮断することで眼軸長の視覚を制御し,近視化を抑制する。
光学的方法を検証するランダム化比較対照試験(RCT)では,累進屈折力レンズ(PAL)の近視抑制効果は屈折度で11~17%で,臨床的に効果不十分とされた。近年,RRG(radial reflective gradient)デザインレンズや,PALとRRG両者の特性を持つPA-PALなどの特殊非球面レンズを用いた眼鏡の近視抑制効果を検討するRCTが行われ,RRGでは近視抑制効果は屈折度で30%であることが示された。一方,多焦点コンタクトレンズとオルソケラトロジーによる近視抑制効果を検討するRCTでは,それぞれ34~49%,30~54%と,眼鏡より高い抑制効果が示された。
薬物療法では,ムスカリン受容体拮抗薬が主に用いられる。特に1%アトロピン点眼は最も強い近視抑制効果を示している。しかし,1%アトロピン点眼は調節麻痺による近見障害,散瞳による羞明,全身的副作用,点眼中止後の近視進行などの問題がある。ところが,2012年のATOM2 studyにおいて,極低濃度(0.01%)アトロピンでも,1%アトロピンの持つ約80%の近視抑制効果にせまる,約60%の抑制効果があることが明らかとなった。さらに,散瞳や近見障害などの問題がなく,点眼中止後のリバウンドも少ないことが示され,脚光を浴びた。
1) 長谷部 聡:眼科. 2014;56(8):965-72.