従来法のMRIではTR,TE,TIなどの各種パラメータを撮像前に設定し,それに応じたコントラスト強調画像を取得する。すなわち,1回のスキャンでは1種類のコントラスト強調画像しか取得することができない。一方,Synthetic MRIでは1回のスキャンによりT1値,T2値,プロトン密度を定量する。これらの定量値に対して,後からTR,TE,TIを調節することによって任意のコントラスト強調画像をリアルタイムに合成することができる(文献1,2)。
定量値の測定時間は近年,大幅に短縮された。5~7分程度で行うことができるようになったため,診断に必要となる複数のコントラスト強調画像を従来法にて取得することに対して時間的なメリットがある。また,定量後に任意のコントラスト強調画像を合成することができるため,撮像前には必要と思われていなかった画像を後から合成可能であることも利点のひとつである。
ただし,現時点ではFLAIR像にてpartial volume effectにより脳表を縁取るような高信号のアーチファクトが出現してしまうため,FLAIR像に関しては従来法での撮像も追加したほうがよいと考えている。
1) Warntjes JB, et al:Magn Reson Med. 2008;60(2):320-9.
2) Bylstad I, et al:Acta Radiol. 2012;53(10):1158-63.