【質問者】
富井啓介 神戸市立医療センター中央市民病院 呼吸器内科部長
血管炎とは,血管壁を炎症の場とする疾患群です。“The tissue is the issue”と言われるように,診断では組織的に「血管炎」を証明することが最重要ですが,次に診断に有用な血清マーカーに抗好中球細胞質抗体(ANCA)があります。これは血管炎の主体を占める“small vessel vasculitis”の重要なマーカーとなっています。
ANCAは1982年,Daviesにより“Segmental necrotizing glomerulonephritis with anti-neutrophil antibody,possible arbovirus aetiology?”としてオーストラリアのある地域(Murray River valley)に流行したRoss River virus感染症の指標として報告1)されましたが,1985年にLancet誌に掲載された論文によって,ウェゲナー肉芽腫症〔現在は多発血管炎性肉芽腫症(granulomatosis with polyangiitis:GPA)〕のマーカーであることが判明しました2)。
ANCAは間接蛍光抗体の染色パターンによりP-ANCAとC-ANCAにわけられますが,その対応抗原はそれぞれMyelo-peroxydase(MPO),Proteinase 3(PR3)です。MPO-ANCAは顕微鏡的多発血管炎(MPA)の70%,PR3-ANCAは活動性のあるGPAの90%以上で陽性となり,日常臨床で頻用されています。当初,(特に後者の)特異性がきわめて高いとされましたが,事前確率の低い一般臨床の集団に用いると感度・特異度が鈍化するのは,本検査でも例外ではありませんでした。
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