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下咽頭癌に対する経口的切除  【手術負担の軽減,術後嚥下障害の軽度化,放射線後遺症の回避など,さらなる発展に期待】

No.4808 (2016年06月18日発行) P.57

持木将人 (帝京大学耳鼻咽喉科准教授)

登録日: 2016-06-18

最終更新日: 2016-10-29

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従来,下咽頭癌は発生部位が診察困難であること,ある程度進行しないと症状が出にくいこと,などから,進行癌で見つかることが多かったが,近年の電子ファイバースコープの発達,とりわけnarrow band imaging(NBI)に代表される特殊内視鏡によって早期に発見されるケースが増えている。これまで,下咽頭早期癌においては外切開を伴う下咽頭部分切除+遊離皮弁移植,もしくは放射線化学療法が行われていたが,近年では他分野にて頻繁に行われる内視鏡などを用いた低侵襲な手術(経口的切除)が,一部の施設で行われるようになった。
下咽頭癌における内視鏡手術や鏡視下手術にはEMRやESDのほかに,特殊な彎曲型喉頭鏡下に上部消化管用内視鏡と経口的に挿入した鉗子・電気メスを用いる内視鏡的咽喉頭手術(endoscopic laryngo-pharyngeal surgery:ELPS)や,拡張型喉頭鏡にビデオ喉頭鏡を接続して行うtransoral videolaryngoscopic surgery(TOVS)などがある。さらに,ごく一部の施設に限られるが,da Vinciシステムを用いた経口的手術も開発中である。
これらにいまだ定まった手術適応基準というものはなく,また解決するべき偶発症・後遺障害は多いが,手術の負担が大きく軽減されること,術後の嚥下障害も軽度となることが多いこと,放射線の後遺症が回避されることなどから,今後さらなる発展が期待される分野である。

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