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新しい創傷治療:マゴット療法 【皮膚潰瘍創で,良好な肉芽組織と黄色壊死組織が混在する状態が適応】

No.4816 (2016年08月13日発行) P.52

宮永 亨 (金沢医科大学形成外科講師)

登録日: 2016-08-13

最終更新日: 2016-10-30

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マゴット療法(maggot therapy)とは,ヒロズキンバエの幼虫である医療用無菌ウジ(マゴット)を用いた創傷治療法である。古代マヤ文明の頃より行われてきたとも言われる古典的な治療法であるが,その有用性が近年再認識され,わが国においても普及しつつある。
マゴットは,複数の蛋白分解酵素が含有された分泌液を出して壊死組織を融解し,貪食する。この分泌液は,肝細胞増殖因子(HGF)や血管内皮増殖因子(VEGF)など,各種増殖因子の産生促進作用や,多剤耐性菌への抗菌効果を有している(文献1)。
壊死組織の付着した創面に本法を用いることで,創面の清浄化や良好な肉芽組織の増生が得られる。糖尿病性壊疽や下肢虚血性潰瘍,静脈うっ滞性潰瘍などに用いられることが多い。創傷治癒の豊富な知識と技量を持つ形成外科医にとって,マゴット療法は必須の治療法ではないが,適応を選べば有用な創傷治療法のひとつとなる。
上述の皮膚潰瘍創で,良好な肉芽組織と黄色壊死組織が混在する状態が,通常,マゴット療法の適応となる。このような混在創に対して本法を用いると,良好な肉芽組織を損傷せず,選択的な壊死組織の除去が可能となる。併せて,感染の防止や肉芽組織の増生が得られることで,創傷治癒の促進効果が得られる。
問題点は,マゴット療法を行っても診療報酬を算定できないことである。そのため,現時点ではどの医療機関でも行える治療法ではない。

【文献】


1) 本田謙次郎:形成外科. 2015;58(8):849-54.

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