【Q】
抗リン脂質抗体症候群では,血小板減少症を合併することがあります。一方,特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病でも抗リン脂質抗体陽性患者は少なからず存在します。両者を鑑別する際のポイント,ならびに血栓傾向と出血傾向が併存する可能性があるので,その対処方法を,北海道医療大学・家子正裕先生にお願いします。【A】
血中に抗リン脂質抗体(antiphospholipid antibody:aPL)が検出され動静脈血栓症や妊娠合併症を呈する抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)では,約3割の症例に血小板減少が認められます。また,APSの臨床症状を認めないaPL陽性者において,血小板減少が認められる場合があり,これは抗リン脂質抗体関連血小板減少症(aPL associated thrombocytopenia)と呼ばれます。これらaPLが起因となる血小板減少症では,治療により血小板が回復すると約半数の症例で血栓症をきたすことが報告されています。一方,特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病(idiopathic thrombocytopenic purpura:ITP)患者にaPLが検出される場合もあります。aPL起因性の血小板減少とaPL陽性ITPの鑑別は非常に重要ですが,きわめて難しく,骨髄所見やPA-IgGの有無などでも区別は困難です。