インフルエンザは,毎冬の流行で1000万人前後の国民が罹患すると推計されており,その合併症も様々で,最も重要な呼吸器感染症のひとつである。わが国では健康保険制度のもと,抗インフルエンザ薬による治療が迅速かつ広く行われているが,この診療をより確実な形で支えているのは,インフルエンザ抗原検出キットによる早期診断であろう。この一連の診療へのアクセスの良さが,2009年のA(H1N1)pdm09によるパンデミックを乗り切るのに大きく貢献したとも考えられている。
一方で,古典的なウイルス確認検査に加えて,遺伝子検査などの新しい検査法も着実に進歩し,インフルエンザは臨床医や研究者のみならず,患者にもよりリアルな形で見えるようになりつつある。
来るべきインフルエンザシーズンを目前にして,感染症診療の基本となる診断技術を紹介する本特集が,明日の診療の一助となれば幸いである。
1 インフルエンザウイルス抗原 検出キットの実力
原小児科院長 原 三千丸
広島県立総合技術研究所保健環境センター 高尾信一
2 ウイルス分離培養検査の実力
横浜市衛生研究所微生物検査研究課 川上千春
3 血清抗体検査の実力
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第一室主任研究官 岸田典子
4 インフルエンザウイルス 遺伝子検査の実力
国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第二室室長 影山 努
5 成人インフルエンザの臨床検査
倉敷中央病院呼吸器内科主任部長 石田 直
6 小児インフルエンザの臨床検査
東京医科大学小児科学主任教授 河島尚志
東京医科大学小児科学 森地振一郎
千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野准教授 石和田稔彦