(質問者:石川県 S)
(1)ヌカカとブユ
ヒトが生活する場所周辺で問題となる主なヌカカは,イソヌカカとニワトリヌカカの2種で,シナノヌカカ,シガヌカカ,ウシヌカカも地域により問題となります。
イソヌカカは,海岸の砂地や泥地内,干潟,汽水域,水田,満潮時に水没する泥内,岩礁の潮溜まりなどに幼虫が生息します。成虫は年1回発生し,夏季に激しくヒトを吸血し,釣り人などの被害が問題となります1)2)。幼虫は,土壌の表層から2cm以内の深さに大半が生息し,7cmまで深く潜るものもあり,クロルピリホスメチルやクロルピリホスにより効果的に幼虫駆除した報告もありますが3),広範囲にわたることや非標的生物への影響があるため,幼虫を駆除することは困難です。昆虫成長制御剤(insect growth regulator:IGR)のメトプレンやジフルベンズロンが,イソヌカカの幼虫に対して有効であることは確認されています4)。成虫対策としては,ライトトラップによる捕殺や,家屋内への侵入阻止が挙げられます。行動する際は蚊と同様に,ディート(ジエチルトルアミド)含有の虫よけ剤の塗布,蚊取り線香やファン式蚊取り器,液体蚊取り器を使用する対策も有効です2)。なお,海岸から離れた場所では,ニワトリヌカカが発生します。
河川では,ブユが発生します。主な種としてはアオキツメトゲブユ,アシマダラブユ,ミヤコオオブユ,ニッポンヤマブユなどが挙げられます2)。成虫はコンクリート壁の水際や,植物の葉や茎に産卵し,幼虫は一般に低温の水を好み,きれいな水で流速が10~30m/分程度と水流が速く,川幅が約0.3~1.0mと狭い小川の,流水中の植物や木の枝に吸着して生息します。汚染が進んだ都会では少なくなり,水がきれいな山地などで発生しています。成虫は種類にもよりますが1年を通してヒトを吸血し,行動が活発なのは3~7月です5)。幼虫駆除には,死菌BTi(Bacillus Thuringiensis israelensis)含有錠(チャブ®BT錠),ピリプロキシフェン粒剤(スミラブ®),幼虫の脱皮を阻害するジフルベンズロン水和剤や発泡錠(デミリン®)などがありますが,非標的生物への影響を考慮する必要があります2)。
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