外科治療(頭蓋内微小血管減圧術)は,三叉神経痛の唯一の根治治療である
頭蓋内微小血管減圧術は機能的脳神経外科として位置づけられる。神経症状を消失させるための外科治療であり,すなわち生命に関わらない病態に対して開頭手術を行うというリスクを背負う
インフォームドコンセントに際し,患者との信頼関係は非常に重要であり,術者は治療効果の見込みを含めた提示を行うべきである
治療効果においては手術が大きなウェイトを占めるが,安全に治療を行うためには適切な周術期管理も重要である
三叉神経痛は神経血管圧迫症候群(neurovascular compression syndrome)として分類され,ほとんどの場合,三叉神経を血管が圧迫することで起こる。稀に脳腫瘍など器質的疾患を原因とする場合がある。本稿では本疾患の原因として大多数を占める前者について解説する。
血管による神経への圧迫を減圧する目的で行われる手術は「頭蓋内微小血管減圧術」(K160-2)と呼ばれ,脳神経外科の中では機能的脳神経外科に分類される。通常の脳神経外科との違いは,脳腫瘍,脳血管障害,外傷,奇形など,神経組織を障害する病変に対する手術治療ではなく,正常構造物のmodificationを行うことによる神経機能の改善を目的とする点である。1960年代に治療概念が提唱され,1970年代に米国の脳神経外科医ジャネッタ(Janetta PJ)がmicrovascular decompression(MVD)として手術方法を広めたため,俗称として「ジャネッタの手術」と呼ばれることもある。ほかに微小血管減圧術,神経血管減圧術などの名称があるが,治療内容はすべて同じである。
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