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特集:遺伝子診断と生命倫理を考える

No.4836 (2016年12月31日発行) P.18

登録日: 2016-12-23

最終更新日: 2016-12-21

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  • 遺伝情報の総体であるゲノムの解析技術の進歩により、遺伝子診断の臨床応用が拡大している。政府は今年6月に改訂した「日本再興戦略2016」の中でゲノム医療を推進する方針を打ち出しており、今後、遺伝子診断は一般医にとっても一層身近になるだろう。しかし、遺伝情報は本人だけではなく血縁者にも関係するなど、その臨床応用は生命倫理の観点で慎重な検討が必要だ。
    そこで本特集では、日本の遺伝子診療を牽引してきた福嶋義光氏に今後の遺伝学的検査のあり方についてインタビューを行った。
    そして、近年、生命倫理の問題が特に社会的な議論を呼んでいる出生前診断について、日本ダウン症協会の玉井邦夫氏、社会学者の市野川容孝氏に寄稿していただいた。
    さまざまな立場の有識者の見解から、遺伝子診断で考慮すべき生命倫理の課題について考えたい。


    遺伝子を調べる検査は、①遺伝学的検査、②体細胞遺伝子検査、③病原体遺伝子検査─に分類され、総称して遺伝子関連検査(表1)と呼ばれる。



    がん治療で分子標的薬の有効性や安全性の向上を目的に行われるのは体細胞遺伝子検査で、体細胞の変異は子孫や血縁者に影響しない。一方、子孫に伝えられ、生涯変化することがない遺伝情報を調べる遺伝学的検査は生命倫理上の検討が必要になる。

    日本医学会は「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」(2011年)で、考慮すべき遺伝情報の特性として表2の7 項目を挙げている。



    遺伝子診療や生命倫理の専門家が参加する日本医師会の第ⅩⅣ次生命倫理懇談会(座長=髙久史麿日本医学会会長)は今年5月の答申で、遺伝学的検査・診断において考慮すべき事柄として、①遺伝学的検査の同意、②遺伝情報の共有、③出生前診断、④偶発的所見―について解説。さらに、答申が章を設けて検討しているのが、母体血を用いた新しい出生前遺伝学検査(新型出生前診断、Non-Invasive Prenatal genetic Testing:NIPT)と、消費者向けのDTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査だ。

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