高齢者住宅、有料老人ホームなど「終の棲家」を謳う介護施設入所者の増加と同時に、そうした施設からの救急搬送も増加を続け、救急の現場における問題となっている。
2012年10月、東京都医師会救急委員会が都内の二次救急医療機関を対象に、搬送後入院した患者の1カ月後の転帰についてアンケート調査を実施した。
調査結果のうち、介護施設から搬送された高齢者354人の1カ月後の転帰を示したのが下図。約3割が搬送先または転院先で入院を継続、元の施設の生活に復帰できた人は半数にとどまっている。
また、都内1909の介護施設を対象にした看取りに関するアンケートの結果によると、心肺停止で搬送され病院で最期を迎えた人は6.1%、心肺停止以外で搬送され施設に戻ることなく病院死した人は32.3%に上った。
「施設と病院の医療水準に差があり、戻そうにも戻せないのが一因でしょう」。調査結果をまとめた石川秀樹さん(帝京大講師)はこのように指摘する。
「すべての介護施設に医師の確保を義務づけることや、医師に施設勤務を推奨するなどの対策が必要です。看取りを当たり前に行う『昔日の開業医』の復活も求められます。診療所の施設基準上だけでなく名実ともに24時間365日対応する在宅診療所がまだ少ないため、施設の連携先が限られています」
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