〔略歴〕1986年横浜市大卒。国立がんセンター病院放射線診断部レジデント、同中央病院放射線診断部医員を経て、2006年がん対策情報センター長補佐(情報提供・診療支援グループ長併任)、10年同副センター長。12年3月より同センター長(16年4月よりたばこ政策支援部部長併任)。「がん情報サービス」(ganjoho.jp)の立ち上げ・運営に携わり、国民・患者・医療現場への情報発信に取り組む。
昨年9月、厚生労働省は15年ぶりに「たばこ白書」を改訂し、喫煙と健康影響の因果関係を明記した。さらに政府は2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、受動喫煙防止対策強化法案の整備を進めている。禁煙推進に追い風が吹く一方で、電子たばこへの対応などの検討課題もある。世界標準のたばこ対策実現に向けた課題について、国立がん研究センターの若尾文彦氏に話を伺った。
2016年までの五輪開催国は全て罰則付きの受動喫煙防止法を制定している。日本は2004年にたばこ規制世界枠組み条約(FCTC)に批准しており、本来なら既に対策を推進していなければならない状況にあるが、世界保健機関(WHO)のたばこ政策の評価指標「MPOWER」では、日本はモニタリングのみ「優」で、受動喫煙防止、メディアキャンペーン、広告規制は「不可」という由々しき状態だ(図1)。
国が罰則付き法案という一歩踏み込んだ規制に乗り出す姿勢を見せたことは評価すべきだ。今回の法案が成立しなければ、今後しっかりした規制は難しくなるかもしれない。東京五輪は世界標準のたばこ対策を進める上でのターニングポイントとなる。
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