看護職不足を解消するための一方策として,潜在看護職の再就業が挙げられる。
無床診療所への再就業を希望している潜在看護職が,安心して,安全なケアを提供していくためには,再就業を支援する研修が不可欠であると考える。無床診療所で行われている,あるいは今後行うことが期待されている看護業務を明らかにし,実効性のある研修プログラムを構築していく必要がある。325箇所の無床診療所を対象にした質問紙調査の結果,75%以上の診療所で実施している,あるいは今後実施することが期待されている看護業務として,11の看護技術が挙げられた。
看護職の需給見通しに関する検討が開始されているが,看護職の不足・人材確保は,「2025年の医療・介護」を解決していく上で大きな課題のひとつである。その対策として,約71万人と推計されている潜在看護職の再就業1)が鍵とされており,具体的な支援・方策の立案・実施が喫緊の課題である。
潜在看護職の約8割は,社会参加,やり甲斐を感じたいなどの理由で再就業を希望しているが,就業できない理由として,子育て,能力不足,医療事故への不安を挙げている。そして,潜在看護職の半数以上は,無床診療所への再就業を希望している2)。
潜在看護職への再就業支援として様々な研修が実施されているが,現在,実施されている研修は病院への再就業を想定したものがほとんどである3)4)。そのため,無床診療所への就業を希望している潜在看護職を対象とした研修が不可欠であり,無床診療所の看護業務を明確にし,研修期間,研修内容等を考慮した実効性のある研修を実施していく必要がある。また,新人看護職に対する研修が努力義務化されており,今回の調査結果は,無床診療所への就業を希望する看護職に対する新人看護職研修のプログラムを検討する上でも,参考になるものと考えている。
医師会員制のWebサイトである「m3.com」に登録している内科系無床診療所を開設している医師325人を対象に,現在実施されている看護業務(特に看護技術)と,今後実施することを期待している看護業務を中心とした質問紙調査を行った。
事前調査で,標榜している診療科によって看護業務がかなり異なることが明らかになったので,今回の調査では,無床診療所の63.6%5)を占める内科系無床診療所を対象にすることとした。質問項目は,①無床診療所の属性,②図1に示す31項目の看護技術の実施状況と,今後看護職が実施することを期待するか否か,③31項目以外の看護技術で現在実施しているもの,④潜在看護職採用の意向,⑤無床診療所における看護職への期待(自由記載),とした。31項目の看護技術は,日本看護科学学会による「看護行為用語分類」,日本看護協会の「看護業務区分表」,「新人看護職員研修ガイドライン 改訂版」,「チーム医療推進のための看護業務検討ワーキンググループにおいて選定された行為」等を参考に選定した。本調査研究は,東京医療保健大学のヒトに関する研究倫理委員会の承認(承認番号:27-7)を得て実施した。
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