▶罰則付き受動喫煙防止対策を盛り込んだ健康増進法改正案。塩崎恭久厚生労働相は会見や国会答弁で今国会提出の方針を強調するが、自民党厚労部会という“関所”を通れず猛反発に遭っている。
▶最大の争点は、全ての飲食店に「原則屋内全面禁煙」を一律適用することの是非。経営への影響を懸念する飲食業界の反発を受け、多くの議員が部会で反対を唱える。延床面積30平米未満を規制対象外にするという「修正案」も、「根拠が不明」「田舎にそんな狭い店はない」などと大不評だ。
▶たばこ議連の所属議員を筆頭に、禁煙ではなく分煙推進を求める意見も多い。9日の部会終了後、議連の坂本哲志事務局長は記者団に「たばこはあくまで嗜好品。禁煙・喫煙の店頭表示をするなど、消費者・店舗双方の選択の自由を保障すべき」と語っており、業界団体も同様の主張を訴えている。
▶法案の根拠に「東京五輪」が絡むことを疑問視する声も根強い。ある地方選出議員は「東京だけでやれ」と露骨に反発。「あと3年もある」と議論をいつまで引き延ばせるか尋ねる議員もいる。
▶医師議員をはじめ法案に全面賛成する議員も少数ながらいるが、反対論のほうが勢いは強い。ただ、受動喫煙防止の必要性には大半の議員が理解を示しており、反対論は支持者に配慮した「ポーズ」の側面もある。15日の部会後、渡嘉敷奈緒美部会長は記者団に「意見は出尽くした」と話した。
▶しかし、法案提出後にも“火種”が残る。加熱式たばこ、電子たばこは法案に規制対象として盛り込まれず、法施行までに取り扱いが決まる見通しだ。医師の間でも有害性・安全性を巡り見解が分かれているだけに調整は難航必至だろう。受動喫煙防止対策の法制化は今後も波乱が予想される。