SPRINT試験のサブグループ解析において,収縮期血圧(SBP)120mmHg未満への積極的降圧療法は,75歳以上においても心血管病(CVD)予防に有用であり,安全であることが明らかとなった
フレイルの有無にかかわらず,積極的降圧療法は有効かつ安全であった
積極的降圧療法を行う場合には,白衣現象の影響が少ない血圧測定を行うように心がけるとともに,家庭血圧や24時間血圧で過度の降圧がないことを確認する。また,低血圧,電解質異常,急性腎障害などの出現に注意する
75歳以上を対象としたSPRINT試験のサブグループ解析によると,収縮期血圧(SBP)140mmHg未満を降圧目標値とする通常治療群に比べ,120mmHg未満を降圧目標値とする積極的降圧療法群では,冠動脈疾患・脳卒中・心不全からなる心血管病(cardiovascular diseases:CVD)発症が有意に減少していた1)。では,はたして75歳以上の高血圧患者すべてに,この結果を当てはめてもよいのだろうか。本稿では,後期高齢者における積極的降圧療法の有効性と安全性について考察する。
これまでに報告されている観察研究のメタ解析により,高齢者でも血圧とCVDの間に直線的な正の関連があることが示された2)~4)(図1)。年齢にかかわらずCVDのリスクが最も少ない血圧レベルは,至適血圧(120mmHg)以下であるとされている。
大規模臨床試験のメタ解析であるblood pressure lowering treatment trialists’ collaboration(BPLTTC)においては,プラセボに対するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme inhibitor:ACE阻害薬)やカルシウム拮抗薬のCVD予防効果,より低い降圧目標値を設定した積極的降圧療法のCVD予防効果は,65歳未満と65歳以上で有意差がないことが示されている5)。
Lvら6)によるランダム化比較試験のメタ解析においても,60歳以上と60歳未満で積極的降圧療法のCVD予防効果はほぼ同等であった。しかし,75歳以上の後期高齢者における積極的降圧療法の有効性および安全性は,明らかにされていなかった。
一部の観察研究は,フレイルを認める高齢者や歩行速度の遅い高齢者において,血圧の低下はCVDおよび死亡の増加と関連することを報告し,過度な降圧療法の危険性を示唆していた7)8)。
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