H1N1pdm09の一部にオセルタミビルへの感受性を著しく低下させる変異がみられる
オセルタミビル耐性H1N1pdm09の2013〜14年流行期の日本での頻度は4%程度であった
オセルタミビル耐性H1N1pdm09の流行状況は地域により異なっており,その増加傾向ははっきりしない
ザナミビルとラニナミビルの感受性はオセルタミビル耐性H1N1pdm09で保たれている
日本ではノイラミニダーゼ(NA)阻害薬がインフルエンザの治療に広く用いられている。そのため,NA阻害薬への耐性ウイルスに対する懸念も大きい。2013〜14年流行期においてはオセルタミビル耐性ウイルスという言葉がマスメディアに取り上げられ,一般の人々の関心も集めた。薬剤耐性には,薬剤治療中に薬剤耐性ウイルスが生じる場合と感染したウイルス自体が薬剤耐性である場合がある。抗インフルエンザ薬であるアマンタジンはM2蛋白を阻害して抗ウイルス作用を示すが,M2蛋白の変異により,治療中に耐性ウイルスが出現し,そのアマンタジン耐性ウイルスが周囲に感染を起こすことが知られている。また,現在流行しているH1N1pdm09とH3N2はアマンタジン耐性である。
一方,NA阻害薬の場合は治療された患者から耐性ウイルスが出現し,周囲に感染を拡大させたという報告はない。H1N1pdm09でも同様に,オセルタミビルを含め4つのNA阻害薬で耐性ウイルスが出現し,周囲へ感染が広がったという報告はまだみられない。
オセルタミビルの薬剤耐性が問題になったのは,2007年に北欧で最初に確認されたオセルタミビル耐性となるNAのアミノ酸変異H274Yを持つH1N1(ソ連型)ウイルスである。日本では2008~09年流行期に分離されたH1N1は,ほぼ100%が,このオセルタミビル耐性ウイルスであった(図1)1) 。オセルタミビル耐性H1N1感染者では,オセルタミビルの初回投与から解熱までの時間平均が,前年度に流行したH1N1感染者や,同じ流行期のH3N2感染者に比較して有意に延長していた(図2)2)。
一方,ザナミビルでは,H275Y変異を持つH1N1感染者でも解熱時間の延長はみられていない。
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