糖尿病患者では,健常人に比較して骨折リスクが上昇(1型>2型)している
糖尿病の骨脆弱性は,骨密度に依存しない骨強度の低下(骨質の劣化)が特徴的である
長期にわたって血糖コントロール不良の患者では骨折リスクが高いため,早期からの治療介入による骨折予防が望まれる
血糖高値が長期にわたる糖尿病患者に骨粗鬆症の合併が多いことは70年近く前から指摘されていたが,肥満の合併が多い2型糖尿病では骨密度が維持されることが多く,あまり注目されてこなかった。しかし近年,糖尿病では,1型,2型のいずれにおいても,健常人に比して脆弱性骨折リスクが上昇していることが明らかになり,機序の解明とともに対策の必要性が高まってきている1)。
形態的椎体骨折を有する日本人女性の骨密度を糖尿病の有無で比較したところ,非糖尿病では低い骨密度に多く分布しているのに対し,2型糖尿病では比較的幅広く分布し,骨密度が高くても骨折を生じることが示唆された。形態的椎体骨折リスクは,非糖尿病群と比較して男性で4.7倍,女性で1.9倍に上昇していた2)。海外のメタ解析では,1型糖尿病における大腿骨近位部の骨密度Zスコア(同性・同年齢の平均骨密度からの偏差)は-0.37SDと低下しており,この値から推定される骨折リスクは大腿骨近位部で1.47倍となる。ところが,実際の骨折リスクは6.94倍であった3)。一方,2型糖尿病では,骨密度Zスコアは+0.27SDとやや高値を示したにもかかわらず,実際の骨折リスクは1.38倍に上昇していた。以上から,糖尿病における脆弱骨折の発症には,病型を問わず,骨密度で規定されない骨脆弱性が関与していると言える。
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