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(7)肥満症─ロコモに着目した指導 「食事制限はしたくない」「運動すると膝が痛くなるから運動しない」と言う[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.44

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

長谷川共美 (愛知医科大学運動療育センター)

牛田享宏 (愛知医科大学学際的痛みセンター センター長)

登録日: 2016-09-01

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    62歳,男性。会社を定年退職した直後。
    身長161.2cm,体重79.5㎏,BMI 30.6。2型糖尿病,高血圧症, 高コレステロール血症の合併。
    40歳代に入った頃から,健診で高血圧,脂質異常,2型糖尿病などを指摘される。以来,治療開始したが薬でのコントロールのみで運動などはまったくしていない。現在,血糖121 mg/dL,HbA1c 7.7%,安静時血圧143/90mmHg,TG 154mg/dL,LDL-C 134mg/dL。当院へは定期的に受診している。8年前,他院にて糖尿病教育入院を行い3週間で6㎏減量を達成したが,その後リバウンドし現在の体重となる。
    飲酒:飲酒の習慣なし。退職後であまり頻度は高くないが,付き合いで飲む程度。運動:運動習慣なし。最近,普段から脚の突っ張り感があり,長く歩くと膝が痛む。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    肥満解消のため食事指導と運動指導を処方したいが……
    ▶「食事制限はしたくない」と指導を嫌がる
    ▶「運動による減量も,膝が痛むのでできない」と言う

    生活習慣の改善が必要で,薬でのコントロールよりも食事の見直しや運動での減量のほうが確実に病気の進行を抑えられることを説明したが,「飲酒の習慣もないし,普段もそんなに食べていないから食事制限はしたくない」とのこと。日常の活動量を上げ,食事での摂取に見合ったエネルギー消費を心掛けることを説得するが,散歩,ウォーキングを行うと膝が痛いと訴える。普段何もしていない時でも脚に突っ張り感があるとのことで,今何か運動介入しないと体力の低下や日常生活の活動低下への悪循環が危惧される。

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)メタボリックシンドロームやロコモティブシンドロームに関する基礎知識

    メタボリックシンドロームに関しては一般的な知識を持っている。「私はメタボだから……」と,自ら口にすることもある。一方,ロコモティブシンドロームに対する知識は乏しい。脚の突っ張り感や,歩くと膝が痛いことについては「安静が一番」「大事にする」という考え方しかなく,その後治って歩けるだろうと思っている。加えて,日常活動量が低く,このまま運動不足が続くと筋萎縮や続発性のロコモティブシンドロームへと移行しやすいことは認識していない。

    (2)経過と患者の「思い」

    8年前の教育入院で,食事を制限すればやせること,生活習慣病に対する治療効果も体験してわかっているが,「入院中のような食事管理は受けたくない。なんとか栄養指導なしで病気の治療をしてほしい」「膝が痛くなければ運動でやせることも考えているが,今は膝が痛いので運動できないし,少しの時間ではやってもしかたがない」と思っている。

    残り3,233文字あります

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