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(22)高齢者・2型糖尿病─認知機能の悪化 今までできていた食事・運動療法ができなくなってきた[特集:困った患者の生活習慣指導]

No.4722 (2014年10月25日発行) P.119

編集: 津下一代 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長)

松下まどか (あいち健康の森健康科学総合センター健康開発部主任専門員)

登録日: 2016-09-01

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  • 病歴(検査データは異常値のみ)
    85歳,男性。退職後は妻(80歳)と2人暮らし,息子が1人いるが遠方に居住。
    25年前に糖尿病を指摘され内服治療を開始,10年前からインスリン強化療法を導入している(超速効型3回注,持効型1回注)。
    インスリン導入後,血糖コントロールは改善し,HbA1c値6%台を維持していた。
    しかし,数年前よりアルツハイマー型認知症と診断され,徐々に認知機能が悪化,自己注射が困難となってきた。そのため,最近は妻が夫に替わりインスリン注射の管理を行っていたが,その妻も半年前に転倒から腰椎圧迫骨折を起こし,夫の介護が困難となってきた。
    最近,食事療法が守れなくなってきており,ここ半年でHbA1cは7~8%と上昇してきている。また,低血糖症状も多いようである。糖尿病性合併症はない。
    家族歴:両親とも糖尿病,合併症なし。飲酒,喫煙なし。運動:散歩程度,食生活:以前はまじめに取り組んでいたが,認知機能の悪化に伴い,間食が増えてきているとのこと。

    1. 医師はどのような点に困っているのか?

    問題点
    ▶認知症によりインスリン注射の自己管理が難しくなっている
    ▶介護者の妻も高齢者である
    ▶低血糖症状を頻回に起こしている

    今までは良好なコントロールを保っていたが,認知機能の低下で血糖コントロールが悪化してきている症例である。妻のサポートによりしのいできたが,その妻も高齢であり夫の介護は困難になってきている。最近は,低血糖症状も頻回に起こしているようである。これまでのような厳格な血糖コントロールが必要であろうか?それとも目標を緩めるべきだろうか?

    2. 困難となる患者の状況をどう整理するのか?

    (1)患者の身体的状況

    軽度の認知機能低下を認め,簡単なことは理解し実行できるが,計算など複雑な問題に関しては実行不能である。また,規則正しいバランスのよい食事摂取は難しい状況で,妻に間食を制止されると激昂することもある。他者との交流もあまりなく,閉じこもっている状況が続いている。

    (2)患者の家族関係

    患者は認知症が徐々に進行し,正確な意思決定は困難である。妻も日常生活を送る上では問題はないが,夫の介護を行うことはしだいに難しくなりつつある状況である。遠方の息子も親を心配してはいるが仕事があり,同居することは難しい状況のようである。

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