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完全皮下植込み型除細動器(S-ICD)の適応,問題点,今後の展望【従来ICD適応患者のほとんどを網羅でき,不適切作動等の改善も進んでいる】

No.4860 (2017年06月17日発行) P.56

北岡裕章 (高知大学医学部老年病・循環器内科教授)

栗田隆志 (近畿大学医学部附属病院心臓血管センター 教授)

登録日: 2017-06-14

最終更新日: 2018-11-28

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  • 心室頻拍症や心室細動などの致死性・頻脈性不整脈の治療として,従来,経静脈的リードを使用した植込み型除細動器が使用されています。最近,心臓内にリードを留置しない完全皮下植込み型除細動器(subcutaneous implantable cardioverter-defibrillator:S-ICD)システムが使用できるようになりました。現在の適応,問題点,今後の展望について,近畿大学・栗田隆志先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    北岡裕章 高知大学医学部老年病・循環器内科教授


    【回答】

    S-ICDは,リードと機器本体(システムのすべて)が皮下に植え込まれ,静脈アクセスがまったく不要な画期的なICDです。本体は腋下に,リードは胸骨左縁に植え込まれます。最大80Jの出力でショックを送出でき,除細動後のバックアップペーシングは30秒間可能ですが,抗頻拍ペーシングはできません。

    (1)植込み時のスクリーニング

    事前に植込み部位に相当する部分に電極を貼り付けた体表面心電図を用いて,S-ICDにて記録される患者の心電図(3つの体表面誘導)が感知基準に適合するかを判断します。スクリーニングには専用のスケールを使い,坐位,臥位など2つ以上の姿勢での当該電極位置からの心電図が用いられ,いずれか1つの誘導でも,2つ以上の異なる姿勢でスクリーニング条件が満たされれば適応とします。

    (2)S-ICDの適応

    基本的に現状のICD適応患者のほとんどを網羅し,①心機能が正常で徐脈時ペーシングなどが不要な疾患(Brugada症候群,特発性心室細動,QT延長症候群,徐脈を有さない一次予防適応など),②既にペースメーカーが植え込まれており,新たなリード挿入が望ましくない場合,③静脈閉塞や先天性心奇形(術後を含む)などにより経血管的なアクセスが得られない場合などが適応となります。一方,①単形性心室頻拍が発作の主体であり,抗頻拍ペーシングがその停止に有効な場合,②単極ペーシングのペースメーカーを有する患者などは適応となりません。

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