2016年2月,SCCM(米国)/ESICM(欧州)により,15年ぶりに敗血症の定義および診断基準が改定された1)。大幅な変更であり,改定内容を把握しておくことは重要である。
新定義では,「重症敗血症」という用語はなくなり,新たに「敗血症」と「敗血症ショック」が規定された。敗血症は「感染に対する宿主生体反応の調整不全で,生命を脅かす臓器障害」,敗血症ショックは「適切な輸液負荷にもかかわらず,平均動脈圧65mmHg以上を維持するために循環作動薬が必要で,血清乳酸値が2mmol/L(18mg/dL)を超えるもの」となった。従来の重症敗血症以上が敗血症に該当することになり,より重症度が高い患者集団に限定されたと言える。
敗血症の新診断基準は,「感染症が疑われ,SOFAスコアで2点以上の変化を認める」となった。従来のSIRS基準が消え,SOFAスコアが採用されている。また,外来などICU外では,「qSOFAスコアの3項目(呼吸数22回以上,収縮期血圧100mmHg以下,GCS<15の意識障害)のうち2項目以上該当で『敗血症疑い』と診断する」との新規定が策定され,敗血症をより早期にスクリーニングし,集中治療を開始するという戦略がとられている。
近年,新規バイオマーカーの登場など新たな試みはあるものの,敗血症は依然として大きな問題であり続けている。新定義の検証作業はこれから始まるとはいえ,診断基準の改定という大きな変更によって,敗血症の早期発見・治療が促進され,予後改善につながることが期待される。
【文献】
1) Singer M, et al:JAMA. 2016;315(8):801-10.
【解説】
黒田浩佐*1,森松博史*2 *1岡山大学麻酔・蘇生学 *2同教授