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これからの対策型胃がん検診:来年度から内視鏡検査も導入─日本消化器がん検診学会がマニュアル作成へ

No.4774 (2015年10月24日発行) P.12

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-09

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来年度から対策型胃がん検診(市町村が実施する住民検診)が変わる。内視鏡検査も実施されるため、体制整備の確保が急務だ。一方で、医療現場からはリスク層別化を求める声も根強い。

今後の対策型胃がん検診について議論していた厚労省検討会の報告書が9月29日、公表された(別掲)。死亡率減少効果を示すエビデンスが認められたとして、新たに内視鏡検査も推奨。40歳代の胃がんの罹患・死亡率が減少しているため、対象年齢は現行の40歳以上から50歳以上に変更した。体制整備については、日本消化器がん検診学会が今後作成するマニュアルなどを参考にするよう求めた。

新検診は来年度から実施。ただ急な体制変更は混乱を招く可能性もあるため、当分は40歳代のX線を認めるなどの経過措置も設ける。厚労省は年内にも新指針を発出予定。学会のマニュアルも「作成を急ぐ」(健康局がん対策・健康増進課)としている。

JDDWで新検診を議論

今月8日、都内で開かれたJDDW(日本消化器関連学会)では、対策型胃がん検診に関するパネルディスカッションが開かれた。特に議論となったのが、X線と内視鏡の補完関係と内視鏡の精度管理だ。

補完関係については、青木利佳氏(徳島県総合健診センター)が、医療過疎地で全員が内視鏡検査を実施することは「マンパワーの点でかなり難しい」と指摘。ピロリ菌感染の有無と胃粘膜萎縮を血液検査で評価するABC検査やX線診断で胃がんのリスクを層別化し、ハイリスク者に内視鏡を実施するなど、医療資源を有効活用することを提案し、これに他の登壇者も賛同した。また、小林三善氏(KKR高松病院)は「内視鏡を痛がる人もいる」と述べ、X線の選択肢を残す意義を指摘した。

非専門医の参画がカギ

精度管理については、2008年から対策型検診として内視鏡を開始した金沢市の大野健次氏(金沢市医師会)が「内視鏡検診の質、術者や機器のレベルをどう統一するかが課題」との考えを示した。

一方、1996年から対策型検診として内視鏡を導入した長崎県上五島地区の本田徹郎氏(長崎みなとメディカルセンター市民病院)は、精度管理の重要性に賛同した上で、「上五島地区では非専門医が内視鏡を実施し、死亡率減少につながった」と紹介し、非専門医の貢献を強調。ABC検査と内視鏡を対策型検診に取り入れる水戸市の齋藤洋子氏(水戸市医師会)も、「水戸市も精度管理にエネルギーを注いでいるが、非専門医でも死亡率減少効果を出した(上五島地区の)結果に勇気づけられた」と評価した。

対策型検診として内視鏡検査を実施するには非専門医の参画がカギとなることは間違いないようだ。

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