食道癌においては,JCOG9907の結果,cStageⅡ,Ⅲ食道癌に対しては,術前補助化学療法+手術が標準治療となった
胃癌においては,S-1による術後補助化学療法が標準治療ではあるが,今後はStageⅢ症例などに対してはS-1+αの戦略が求められる
大腸癌に対してはR0手術が行われたStageⅢ症例に対する術後補助化学療法が推奨される
食道癌で外科手術の対象となるのは,内視鏡的治療の適応となるStage0や,T4症例またはM1症例を除いた,StageⅠ~Ⅲ(T1b〜T3)である。cStageⅠ,Ⅱ,Ⅲに対して行われた食道切除術の5年全生存率は,それぞれ74.4%,49.5%,30.7%と報告されている(『食道癌診断・治療ガイドライン 2012年4月版』)。このようにStageⅡ,Ⅲの手術単独での治療成績は不十分で,さらなる治療成績の向上が望まれている。このため,StageⅡ,Ⅲに対して世界的に様々な補助療法が行われ,その有効性が検証されている。
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の食道がんグループ(JEOG)では,1978年より,食道癌に対する周術期補助療法の有効性に関する大規模ランダム化比較試験(RCT)を継続して行ってきた。食道癌に対する補助化学療法のRCTであるJCOG9204とJCOG9907が行われ,この結果をふまえて,現時点ではcStageⅡ,Ⅲ(T4は除く)に対する標準治療は,術前補助化学療法(FP療法)+手術となっている。
胸部食道扁平上皮癌の手術において,フルオロウラシル(5-FU)+シスプラチン(CDDP)による術後補助化学療法の有効性を示したJCOG9204の結果が2003年に発表され,リンパ節転移陽性症例に対してわが国では補助化学療法は術後に行うのが標準治療になった1)。その後,補助化学療法を,術前と術後のどちらに施行したほうが有効かを比較するJCOG 9907が行われた。JCOG9204と同様にレジメンは5-FU+CDDPが用いられ,術前あるいは術後化学療法群に無作為に割り付けられ,330症例が登録された。最終解析で無増悪生存率は両群間において有意差はなかったが,5年全生存率は術後補助化学療法群43%(95%CI:34.6〜50.5,P=0.04)に対し,術前補助化学療法群55%(95%CI:46.7〜62.5,P=0.04)と有意に良好であった(図1)2)。サブグループ解析では,cStageⅡ,cT1+T2,胸部中部食道でより効果的とされた。本試験結果により,わが国におけるcStageⅡ,Ⅲ食道癌に対しては,5-FU+CDDP療法による術前補助化学療法+手術が標準治療となった。
JCOG9907とJCOG9204の結果より,現時点でのわが国におけるcStageⅡ,Ⅲ(T4は除く,TNM分類第6版)に対する標準治療は,術前補助化学療法(FP療法)2コース+手術となった。JCOG9907のサブグループ解析の結果では, cStageⅢでは全生存率の群間差に有意差が認められず,FP療法以外のレジメンの開発が必要であると考えられた。
5-FU+CDDPにドセタキセルを加えたDCF療法は,胃癌,頭頸部癌領域でFP療法を凌駕する治療成績が報告されており,食道癌でもその効果が確認されつつある(図2)。StageⅠB/Ⅱ/Ⅲ食道癌(T4を除く,TNM分類第7版)に対する術前CF療法/術前DCF療法/術前CF-RT療法の第3相比較試験JCOG1109(NExT試験)が2012年12月より進行中であり,その結果が待たれる。
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