何らかの原因で虫垂内腔が閉塞,細菌感染を起こすことで発生する急性炎症性疾患であり,すべての年齢層に発症するが10~20歳代に好発する。急性虫垂炎は腹部救急疾患群の中で最も頻度の高い疾患である。開腹手術の対象となる代表的な疾患であるが,画像診断技術の進歩,抗菌薬の有効性の向上,腹腔鏡下手術の普及により,治療方針が多様化している。
感度の高い症状としては右下腹部痛,圧痛,嘔吐があり,特異度が高い症状としては痛みの移動,下痢,反跳痛が挙げられる。初回評価で虫垂炎の診断が確定しない場合には,身体診察と検査を繰り返し行い,虫垂炎の除外診断を続ける“active observation”が陰性切除率の低下,穿孔率の減少,診断の遅れの防止に有効であるとされている1)。また,妊婦や高齢者では身体所見からの診断は困難な場合が多いため,画像診断を適切に用いて診断を進めることが重要である。
血液検査:白血球数の増加(1万/mm3以上),CRPの上昇がみられるが,高齢者では白血球数の増加がみられない症例もあり,注意が必要である。
腹部X線検査:右下腹部に糞石による石灰化像や,腸管麻痺に伴うガス像の拡大がみられるが,他疾患(イレウス,消化管穿孔,尿管結石など)との鑑別に有効である。
腹部超音波検査:虫垂外径の増大(小児約6mm,成人9 mm)や糞石が観察される。虫垂周囲の高エコー像,腹水,膿瘍などの存在は,重症度が蜂窩織炎以上の虫垂炎の診断となる。
腹部CT検査:虫垂の腫大,虫垂壁の肥厚濃染像,虫垂周囲の炎症,膿瘍の形成,糞石の確認に非常に有用である2)。
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