高齢化社会の中で慢性硬膜下血腫症例は増加傾向にあり,急激な脳卒中様発症(急性増悪型),頭痛,精神症状,片麻痺(歩行障害)をはじめ多彩な症状を呈し,脳血栓,認知症,脳腫瘍などとの鑑別を要する場合もある。しかし,多くの場合,正しく診断がなされ,タイミングを逸することなく手術治療(穿頭血腫洗浄除去術)が行われれば完治する予後の良い疾患である。
患者の初診医は必ずしも脳神経外科医であるとは限らず,様々な症状により,内科,精神科,整形外科を初診する場合も少なくない。したがって,慢性硬膜下血腫は臨床のどの場面においても必ず念頭に置かなければならない疾患であると言っても過言ではない。今回,現場で成人の症例を多く診療している先生方から,診断のポイント,内科的治療を含む対応,特に高齢化社会において慢性硬膜下血腫をどうみるかについて解説して頂いた。日常診療のお役に立てば幸いである。
1 慢性硬膜下血腫の診断ポイント─頭部CT,MRI所見から
福岡県済生会福岡総合病院脳神経外科主任部長 宮城知也
久留米大学医学部脳神経外科 梶原壮翔
福岡県済生会福岡総合病院脳神経外科部長 竹内靖治
福岡県済生会福岡総合病院副院長 大倉章生
2 慢性硬膜下血腫の治療ポイント
東京都立大塚病院脳神経外科医長 大賀 優
3 高齢化社会における慢性硬膜下血腫の位置づけ
仙台市立病院脳神経外科部長 刈部 博