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DNAメチル化阻害薬とTP53変異【効果が期待できる患者群を,より詳細に同定できる可能性が出てきた】

No.4869 (2017年08月19日発行) P.53

幣 光太郎 (宮崎大学内科学講座消化器血液学)

下田和哉 (宮崎大学内科学講座消化器血液学教授)

登録日: 2017-08-15

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がん細胞ではDNAのメチル化が過剰に起きており,その結果がん抑制遺伝子の発現が抑制されている。DNAメチル化阻害薬は,がん細胞にDNAの低メチル化を誘導し,がん抑制遺伝子の発現回復を期待した薬剤であり,アザシチジン(AZA),デシタビン(DEC,日本未承認)が使用されている。骨髄異形成症候群(MDS)は,造血幹細胞の腫瘍化により高率に急性骨髄性白血病(AML)へ移行する疾患であるが,AZA,DECにより生存延長,白血病化までの期間延長といった効果が得られる。一方,この効果が本当に先に述べた理論上の機序によるのかは証明されていない。

ワシントン大学のグループは,成人MDSまたはAML患者116例において,腫瘍細胞の遺伝子変異とDECによる治療効果の関係を検討した。116例中53例で芽球が5%未満に低下したが,驚くべきことに,TP53変異を有する患者21例は全例がこの奏効群に含まれていた。つまり,TP53変異陽性クローンはDECにより排除されることが明らかとなった。この発見は,通常の化学療法の効果が乏しいTP53変異陽性例の予後改善の可能性を示すと同時に,DNAメチル化阻害薬の作用機序解明の第一歩となるものである。

DNAメチル化阻害薬は,「効くかどうかは使ってみないとわからない薬」から,「明確な効果を期待して使う分子標的治療薬」へと生まれ変わろうとしている。

【参考】

▶ Welch JS, et al:N Engl J Med. 2016;375(21): 2023-36.

【解説】

幣 光太郎*1,下田和哉*2  *1宮崎大学内科学講座消化器血液学 *2同教授

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