▶子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の安全性評価に関する厚生労働省研究班(代表者=祖父江友孝阪大教授)は昨年12月と今年4月、HPVワクチン接種歴がない12〜18歳の男女においても、接種後に報告されているのと同様の機能性身体症状を呈する者が一定数存在するとの疫学調査を明らかにした。女性に限定すると10万人当たり20.4人。症状の数を10以上としても5.3人と推定した。
▶調査結果を受けて、厚労省の会議は先月、HPVワクチンの接種歴がなく、器質的疾患が除外され、慢性疼痛や運動障害、神経症状を有する患者を診療する4人の小児科医からヒアリングを行った。紹介された症例の発症の契機は「手術と帯状疱疹」「インフルエンザワクチン1週間後の下肢痛」「下肢痛と重症口内炎」「芸能人の自殺」など多様だ。対症療法や患者・家族へのカウンセリング、認知行動療法、ハンディキャップを小さくする環境調整、運動の積極的推奨などにより改善したこと、さらに、こうした患者はドクターショッピングを繰り返しやすい一方、1人の医師が継続的に診るほうが予後は良いことなどが報告された。
▶会議終了後、小児神経専門医である桃井眞里子座長は記者団に、自身も器質的疾患のない機能性身体症状を有する患者を診療していたが、その実態は医療界や社会で知られておらず、神経科と精神科との橋渡しもないと指摘。その実態を理解してもらうためにヒアリングを実施したと話した。
▶各種検査で器質的疾患が見つからないために、臓器別に専門分化が進む医学・医療の狭間にいる思春期の患者たち。その回復を支えるための医療はどうあるべきか、心理的・社会的支援をどう届けるのか―。そんな課題が問われている。