わが国におけるTORCH症候群の1年間の症例数は,先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染が1000人(後遺症あり),先天性トキソプラズマ感染が100~200人,先天性ヘルペス感染/新生児ヘルペスが27人,先天性梅毒が18人,先天性パルボウイルスB19感染が8人(非流行年)~22人(流行年),先天性風疹感染が0~5人と推定される
2011年に厚生労働科学研究(山田班)により母子感染の全国調査が行われた。CMVやトキソプラズマの先天性感染の報告数は,予想に反して圧倒的に少なかった。その理由としては,母子感染の予防対策が不十分で,かつ妊婦スクリーニングや検査・診断法が確立されていないので,診断できていない出生児が多いためと考えられる
先天性パルボウイルスB19感染数は予想以上に多く,流行期には流産や死産の原因となっていることが明らかとなった
母子感染対策として,妊娠初期~中期に妊婦の感染症検査を行い,妊娠中の初感染や垂直感染予防のための教育と啓発を妊婦健診で徹底することが挙げられる。また,妊娠予定の女性には,風疹ワクチンの接種を勧める
2011年,厚生労働科学研究(山田班)(以下,2011年調査)によって母子感染の全国調査が行われた。対象は全国2714の産科施設で,わが国の総分娩数の75%を占める施設から回答を得た1)2)。
妊婦健診における感染症スクリーニングとして,「全例で実施している」と回答があったのは,風疹抗体,梅毒血清反応,HIV抗体,HTLV-1抗体,HBs抗原,HCV抗体が99%以上であるのに対し,トキソプラズマ抗体は48.5%,サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)抗体は4.5%であった。トキソプラズマの妊婦スクリーニング実施率については,都道府県により大きな差があった(図1)2)。
症例の臨床症状および検査結果を分析して,最終的に「先天性感染確定」および「不確定」と判定した症例数を表1 2)に示す。CMVとトキソプラズマの先天性感染については,妊婦スクリーニングを実施している施設からの報告数が,実施していない施設に比べて有意に多かった。
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