『食物アレルギー診療ガイドライン2016』1)が出版された。2012年版の基本姿勢は踏襲するが,この間の研究の進歩を取り入れ,よりわかりやすくなった。管理の基本は,原因となる食物を避ける(=アレルゲン除去食)であるが,「必要最小限」とすることが強調され,その方法も具体的となった。
食物アレルギーでは症状を起こさず安全に摂取できる量があり,患者の臨床経過により異なるので,それぞれに「必要最小限の除去」を指示することになる。特に,乳児期に発症した食物アレルギーは成長とともに寛解するケースが多いことが知られているが,これは摂取可能レベルが成長とともに上昇していくことを意味する。したがって,少しずつ変化(改善)する適切な量を見つけて,安全に摂取させる栄養指導が重要となる。摂取可能量が増えれば,患児と家族のQOLが向上するだけでなく,耐性がより早く誘導できる可能性もある。
そのため同ガイドラインでは,食物経口負荷試験の目的として原因アレルゲンの同定に加えて,安全摂取可能量の決定を挙げた(第7章)。患者の状態に合わせた総負荷量の例として,少量(加熱卵黄1個,牛乳3mL程度),中等量(加熱全卵1/8~1/2,牛乳15~50mL)を示し,負荷試験結果に基づいた栄養食事指導の方法を解説している(第8章)。
【文献】
1) 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会:食物アレルギー診療ガイドライン2016. 協和企画, 2016.
【解説】
藤澤隆夫 国立病院機構三重病院アレルギーセンター/院長