リツキシマブの効果的な活用は,濾胞性リンパ腫(follicular lymphoma:FL)の予後に大きな影響をもたらします。そこで,どのような疾患状態にある場合にリツキシマブ単独療法による早期治療介入のベネフィットが大きいか,また,リツキシマブ維持療法について,先行化学療法の種類〔リツキシマブ(R),シクロホスファミド(C),ドキソルビシン(H),ビンクリスチン(O),プレドニゾロン(P)(R-CHOP)やR-ベンダムスチン〕と奏効度によって意義に違いがあるのか,山形大学・石澤賢一先生にご教示をお願いします。
【質問者】
黒田純也 京都府立医科大学血液内科学教授
リツキシマブの臨床導入は,FLの予後を大きく改善しました。しかも毒性が軽度であるため,その適切な使用はFL治療の重要なポイントとなります。
進行期FLの治療は,「低腫瘍量」(腫瘍細胞がより少なく,リンパ腫に起因する症状がない状態)と「高腫瘍量」(リンパ腫に起因する症状がある状態)にわけて検討されます。「高腫瘍量」の場合は,早急な病勢コントロールが必要なため,リツキシマブと殺細胞薬の併用(R-CHOP療法,R-ベンダムスチン療法など)が標準治療と考えられています。
リツキシマブ単独療法のベネフィットが期待されるのは「低腫瘍量」の領域です。これまでは無治療経過観察が標準治療と考えられてきましたが,リツキシマブ単独療法の早期介入により殺細胞薬使用開始までの期間を延長することが示されました。欧州臨床腫瘍学会(European Society for Medical Oncology:ESMO)のガイドラインでは,無症状の場合は無治療経過観察,軽度の症状が出現した場合はリツキシマブ単独療法を推奨しています。この軽度の症状の明確な定義は示されていませんが,何らかの症状があればリツキシマブ単独療法を実施してもよいかもしれません。より早期の無症状の患者に対して,リツキシマブ単独療法介入の臨床的意義を検討する検証的な試験が日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)のリンパ腫グループで実施中です。
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