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(1)地域での子ども虐待予防 [特集:実地医家のための虐待医学]

No.4770 (2015年09月26日発行) P.18

井上登生 (井上小児科医院院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-10

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  • 地域での子ども虐待予防には市町村保健師を中心とした母子保健活動が不可欠である

    要保護児童対策地域協議会を中心に,特定妊婦対策,乳児家庭全戸訪問事業,養育支援訪問事業などが連動し,妊娠期からの切れ目のない支援が重要である

    日々の臨床を通し,母子保健・医療・児童福祉の顔の見える連携構築が必要である

    1. 法定化により変貌を遂げた子ども虐待予防対策

    地域での子ども虐待予防対策は,2004年の児童福祉法改正により,要保護児童対策地域協議会(以下,要対協)が法定化され,市区町村が子ども虐待通告窓口となり,大きく変貌を遂げた1)2)。特に,09年4月に開始された乳児家庭全戸訪問事業(通称,こんにちは赤ちゃん事業)の市町村母子保健・児童福祉部門への導入は重要で,妊娠期からの子ども虐待予防を含む子育て支援の根幹となっている。
    本稿では,地域での子ども虐待予防に関係する重要な市町村事業を紹介し,「地域における切れ目のない支援」をめざし,今後の子ども虐待臨床に生かせる情報を報告する。

    2. 特定妊婦とは

    2004年から開始された,社会保障審議会児童部会児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会による「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」の毎年の蓄積から,特に0日・0カ月での死亡事例の検討結果3) を受けて,09年の児童福祉法改正により,要対協に特定妊婦への支援が位置づけられた(児童福祉法第6条の3第5項)。
    特定妊婦とは,「出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦」と考えられる。具体的には,子どもを持つ資格がないと悩む妊婦,望まない妊娠に戸惑う妊婦,先に生まれた子へのネグレクトや虐待行為の既往のある妊婦,レイプやDVで不本意な妊娠をしたが中絶できない妊婦,妊娠届を届け出ない妊婦,母子健康手帳未交付の妊婦,若年妊婦,高齢者妊婦,妊婦健診未受診,飛び込み出産,墜落分娩,うつ病や統合失調症などの精神疾患のある妊婦,思春期や過去に心身症外来や精神科受診既往のある妊婦など,様々な背景がある。
    このような妊婦にいち早く気づき,市町村保健師と妊婦,そして出産予定の産科の助産師とが連携し,妊娠中あるいは出産直後からの支援をすることが,出産直後の問題を軽減することに有用である。

    残り4,430文字あります

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