リンパ球の増加をみた場合,形態だけでは反応性増加か腫瘍性増加かの判断は難しいので,フローサイトメーター(FCM)を用いて表面マーカーを確認することが必要である
伝染性単核球症は,慢性白血病との鑑別より急性白血病との鑑別が問題になる。EBウイルス(EBV)の初感染によるものが90%であり,ウイルス抗体価の詳しい検索が必須である。芽球様にみえる増加異型リンパ球は,EBV感染B細胞に対する細胞傷害性T細胞(CTL)でCD3,CD8陽性から診断できる
慢性リンパ性白血病(CLL)とその類縁疾患は,わが国では稀である。形態の観察,マーカー・染色体・遺伝子の解析により診断が可能である。一般には緩徐な経過をとるものが多いが,予後不良の疾患も含まれており,早期に疑って検査することが重要である
わが国で発見された成人T細胞白血病(ATL)は,HTLV-Ⅰ感染によるCD3,CD4,CD25陽性T細胞の腫瘍である。flower cellと呼ばれる特有な白血病細胞を認め,新薬の開発が進んでいるが,依然として予後不良な疾患である
末梢血でリンパ球数の絶対的増加(lymphocytosis)をみることは少なからず経験する。その原因を検索するときに問題となる点は,血液内科における最も基本的な検討方法である形態診断で,腫瘍性あるいは,非腫瘍性の増加なのか,明確に判断できない場合がしばしばあることである。リンパ球は抗原刺激など外部からの刺激を受けると活性化され,「幼若化」(blastogenesis)によってリンパ芽球と区別が難しい形態を示す。
しかし一方で,まったくおとなしい成熟リンパ球の形態でありながら,慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia:CLL)に代表されるリンパ増殖性疾患(lymphoproliferative disorder:LPD)の腫瘍細胞そのものである場合もある。
表1にリンパ球増加をきたす主な原因を示す1)。
診断に最も有用な検索は,フローサイトメーター(flow cytometer:FCM)を用いたリンパ球増加の表面マーカー(phenotype)の解析である。FCMの解析では客観的な結果が短時間で得られる。今日ではリンパ球増加をみた場合,FCMのデータがなければ診断は不可能であり,解析によってリンパ球の系統診断や分化段階の情報が得られる。リンパ系の「慢性」白血病は,成熟リンパ球の腫瘍であるため,系統診断が重要である。phenotypeは,T細胞系ではCD3,CD4,CD8,B細胞系ではCD20,CD19,NK細胞系ではCD56が最も基本的なものになる。
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