(東京都 F)
肉ばなれは,筋打撲傷や遅発性筋痛(運動誘発性筋損傷;いわゆる筋肉痛)などとともに,筋損傷の1つとして医学用語にもなっています。あらゆるスポーツで起こり,ハムストリングスに最も多く,ついで,下腿三頭筋,大腿四頭筋などにも好発します1)。
ハムストリングスの肉ばなれが最も起きやすい場面は,疾走中の,特に接地する瞬間です。稀ですが,格闘技などで相手に押されて開脚した状態で倒された場合などに,膝関節伸展位で股関節の屈曲を強制されると,その強い介達外力により,坐骨結節部付近でハムストリングス付着部の断裂が起こります。スポーツ現場では,これらも肉ばなれと呼ばれています。
このように肉ばなれは,直達外力による筋打撲傷とは異なり,自らの筋力(拮抗筋の力)または介達外力によって,抵抗下に筋が過伸展されて損傷し発症するものです。この場合,加わる力の大きさによって,筋線維から筋腱移行部さらに筋腱付着部に至るまで,あらゆる部分で,また様々な程度で損傷されることがわかってきています1)。そのため,比較的軽症なものから重症で難治性のものまで起こりうるわけです。
肉ばなれの程度は筋の形状にも深く関係しており,肉ばなれが起こりやすい筋は,比較的強い力を発揮しやすい羽状筋(筋線維が腱膜に斜めに付着して羽のように見える筋)であり,典型的な肉ばなれは,腱膜の損傷です。当然,肉ばなれには出血も伴いますが,出血や筋線維の損傷より,張力を伝える腱膜の損傷の程度が重症度に関係していることがわかってきています1)。
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