▶子宮頸がん予防(HPV)ワクチン接種後に慢性疼痛の副反応が生じている問題で、厚生労働省の検討会は20日、「接種後の局所の疼痛が心身の反応によって慢性化した可能性がある」との見解で一致した。2月に予定されている次回会議で接種勧奨再開の是非を判断する。
▶検討会では、ワクチン接種後に広範な疼痛を訴えた症例と、運動障害をきたした症例の計130例について医学的に検討。自己免疫疾患と診断された症例以外の副反応報告について「神経学的疾患の可能性」「中毒の可能性」「免疫反応の可能性」「心身反応の可能性」を議論し、前三者の可能性が否定された。
▶被害者団体は「接種よりも被害者自身の問題が大きいと突き放されたようなもの」と抗議する声明を発表している。しかし、一般的な慢性疼痛に「心理・社会的因子」が大きく関わっていることは疼痛治療の専門家も指摘している。今後、心理・社会的因子によって疼痛が生じることへの丁寧な説明が必要だ。
▶国立がん研究センターによると、日本の子宮頸がん患者数は年間で9794人(2008年)、死亡数は2737人(2011年)で、その数は増加傾向を示している。生涯で子宮頸がんに罹患する割合(累積罹患率)は約1%だ。また国立感染症研究所によると、日本の子宮頸がんの50〜70%がHPV–16/18陽性で、HPV–16/18による持続感染を予防するワクチンの効果は90%以上だ。
▶これらのデータに基づき厚労省は、HPVワクチンのがん予防効果を45〜65%とし、予防接種によって罹患率を約0.5%程度に引き下げることができると推計。さらに、これをHPVワクチン販売後の被接種者約300万人に当てはめ、ワクチン販売後に予防できた罹患者数は1万3000〜2万人、予防できた死亡者数は3600〜5600人と推計した。
▶こうしたワクチンの効果をより多くの女性が享受するために、医学的検討によって副反応がワクチンの成分(薬液)によるのではないと判断できたのであれば、早期にHPVワクチンの積極的勧奨が再開されるべきだ。
▶積極的勧奨の再開は、慢性疼痛の副反応を軽視するものではない。慢性疼痛が発症した場合に紹介できる疼痛の専門機関とのネットワークを整備するなど、今回の経験を、より安心して予防接種を受けられる体制づくりに生かし、子宮頸がん予防の充実につなげたい。