近年,循環器外科(心臓血管外科)領域では,冠動脈疾患あるいは弁膜症においては,ほぼ治療法が確立され,治療成績も満足のいくものとなった。しかし,大動脈疾患,特に急性大動脈解離においては診断の遅れや,手術合併症・死亡率など,診療上に多くの問題が残されていた。大動脈解離をはじめとする大動脈疾患は明らかに近年増加傾向にある。わが国では,日本循環器学会をはじめとする合同研究班による「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン(2011年改訂版)」が発行され,診断から治療まで一定の方向性が示されるに至った。
本特集では,稀ではあるが日常診療において遭遇する可能性のある大動脈解離について,診断から治療法に至るまで,第一線で活躍されているエキスパートの先生方に解説頂いた。大動脈解離における認識が高まり,救命率の向上に寄与することを期待する。
1 急性大動脈解離の基礎知識と診断
神戸市立医療センター中央市民病院循環器内科医長 加地修一郎
2 急性大動脈解離の内科的治療と外科的治療
川崎幸病院・川崎大動脈センター 櫻井 茂
3 大動脈解離の慢性期における管理と治療法
東京医科大学心臓血管外科学分野主任教授 荻野 均