高齢者高血圧症の治療対象は,原則として140/90mmHg以上である
65~74歳の降圧目標は140/90mmHg未満,75歳以上の降圧目標は150/90mmHg未満とし,忍容性があれば積極的に140/90mmHg未満をめざす
年齢と合併症による降圧目標が異なる場合は,年齢による降圧目標達成を原則とし,忍容性があれば合併症における低い降圧目標をめざす
降圧薬治療を行う際には,J型現象に配慮する
「高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)」では,高齢者高血圧を対象とした,脳・心血管イベント発症率に差を認めた大規模臨床試験における到達血圧値の比較,さらに疫学研究での血圧値をもとにして降圧目標値が設定されている。
特集①の表1(p19)は高齢者高血圧を対象とし,降圧薬により心血管イベントの発症抑制効果を認めた大規模臨床試験を実薬群の到達収縮期血圧の低い順に示したものである。これら60歳以上の高齢者を対象とした高血圧治療に関する9つの主要大規模臨床試験のメタアナリシスによると,降圧薬治療により,全死亡12%,脳卒中死36%,冠動脈疾患死15%,脳卒中発症35%,冠動脈疾患発症15%の有意な抑制が認められた1)。心血管イベントの発症抑制効果を認めた大規模臨床試験の実薬群の到達収縮期血圧の多くは140mmHg台であることから(特集①,p19表1参照),収縮期血圧の降圧目標を150mmHg未満にすることは高齢者全般に適応できる。
また,わが国で行われた後期高齢者高血圧例を多く含む大規模臨床試験のうち,厳格降圧群(140mmHg未満を目標)と緩徐降圧群を比較したJATOS(平均年齢73.6歳,緩徐降圧群目標140~159mmHg)2)およびVALISH(平均年齢76.1歳,緩徐降圧群目標140~149mmHg)3)では,それぞれ厳格降圧群と緩徐降圧群の2群間にイベント発症に差を認めなかった(表1)4)。さらにJATOSでは,それぞれ有意差は認められないものの,75歳未満例では緩徐降圧群において,75歳以上例では厳格降圧群において,それぞれ1次エンドポイント到達(心血管疾患および腎不全発症)が多い傾向が認められた。これらの結果は75歳以上の高齢者高血圧例では,まずは150mmHg未満を目標とした緩徐な降圧が望ましいことを示す。
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