本症は常染色体優性の遺伝性疾患であり,原因はDNAミスマッチ修復遺伝子の異常のため悪性腫瘍が反復して発生するものと考えられている1)
診断の基準は,少なくとも1つ以上の脂腺腺腫・脂腺腫・脂腺癌,あるいはケラトアカントーマと内臓悪性腫瘍があること。ただし,脂腺母斑などの脂腺腫瘍や,内臓悪性腫瘍を起こしやすい他の因子を持っていないことが前提2)3)
脂腺腫瘍は黄色調の小結節,ケラトアカントーマはクレーターを伴うドーム状結節のことが多い。脂腺腫瘍では病理組織学的に腫瘍細胞の胞巣中に澄明な細胞質を持つ脂腺分化細胞や脂腺導管細胞がみられる2)
【家族歴】 母が肺腺癌,母方の叔父が胆管癌,父方の祖母が子宮癌で死亡した。
【既往歴】 3年前に乳癌(stage ⅡB)にて右乳房切除と右腋窩リンパ節郭清術を行い,術後化学療法後,現在はホルモン療法を継続している。
【現病歴】 左頰部の直径5mm大の皮膚色結節を切除したところ,病理組織学的に境界明瞭な腫瘍細胞胞巣がいくつか集塊をなし,胞巣は小型で塩基性の細胞質を有する細胞と,泡沫状の澄明な細胞質を有する脂腺細胞が,孤立性または集塊をなし不規則に入り交じっている(図2)。これらの腫瘍を構成する腫瘍細胞には,核や細胞の大小不同が観察されたが,異常核分裂像はみられなかった。低悪性度脂腺癌と診断した。
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