急性腹症の画像診断には,腹部単純X線検査,超音波検査,CT,MRIなどが用いられる。それぞれの有用性,限界,危険性を熟知した上で,適切な検査法を選択し正しく画像評価することが求められる
腹部単純X線検査は簡便で,腹部全体を観察可能であるが,診断,あるいは治療法選択への寄与度は高くなく,安易な適応は望ましくない
腹部超音波検査は簡便かつ非侵襲的であり,その陽性所見の診療への寄与度は高い
急性腹症におけるCT,特に造影CTの果たす役割はきわめて大きい。ただし,放射線被ばくと造影剤の危険性に配慮して適切に選択することが求められる
急性腹症においてMRIの果たす役割は限定的であるが,その有用性に応じた臨床活用が求められる
急性腹症は急激な腹痛を主訴とし,緊急手術やそれに替わる迅速な初期対応が求められる疾患群であり,その病態,疾患は多岐にわたる。進行する病態に対し,確定診断が得られないまま,緊急の対応が求められることから導入された疾患概念であるが,より早い段階での正確な診断とそれに基づく適切な治療が望まれることは言うまでもない。画像診断は,診察所見や検査所見から推測される疾患の確認や重症度の評価,原因不明の腹痛の解明,あるいは予期せぬ原因の発見など,きわめて重要な役割を果たし,疾患の診断や治療法の選択,治療効果の判定に貢献している。
本稿では,急性腹症に対する画像検査について,『急性腹症診療ガイドライン2015』1)の記述に沿って,様々な検査法の特徴や適応を概説し,急性腹症における画像検査の使いわけについて考察する。本文中には,ガイドライン中の関連するクリニカルクエスチョンをCQとしてガイドラインに記載の番号を付して記入する。
急性腹症の画像診断には単純X線検査,超音波検査,CT,MRIなどが用いられる。画像検査を行う上では,確定診断や治療方針の決定に寄与する情報が安全かつ迅速に取得できるよう,検査法の有用性,限界,危険性を考慮した適切な選択と的確な実施が重要である2)。
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