「スイッチ」,この言葉を救急分野でよく聞くことになったのは,「スイッチを入れてCSCATTT」の件が原因かもしれない。集団災害においてスイッチが重要であることは余談のないところであるが,それでは他の救急活動についてはどうであろう。院内活動で適切なスイッチ(人,物,情報)を入れることができるか─迅速な対応の成否が予後の良否を決めている。
病院前ではドクターカーやドクターヘリであるが,その利用の有効性を左右するのが覚知要請(迅速なスイッチ)である。うまく活用できている地域と未達の地域の差は何であろう。前者では通信指令段階で医療者を動かしておいて(スイッチを入れておいて),現場救急隊が最終判断する(スイッチを継続するか切るかの判断を下す)活動が浸透している。また,このような地域では事後検証も能動的かつ厳密である。一方,うまくできない地域では本来あるべきdispatcherの責務は軽視され,検証もなおざりな傾向にある。
岐阜県では診断・予後のわかる検証(外傷,心疾患,脳卒中,新処置など)徹底をMCで推進している。また,通信指令員の機能強化研究1)を参考に,標準化教育の中で通信指令員教育を全県下において行っている。いまだ完成とは言いがたいが,今後各地域で必ずや広がりを見せる内容だと考える。救急活動のスタートは通信である。結果は病院にある。全国で必ず実行するべき教育活動であろう。
【文献】
1) 伊藤重彦:一般財団法人救急振興財団委託研究事業「通信指令の機能強化─効果的な口頭指導の研究」総括報告書. 2016.
[http://www.fasd.jp/files/lib/3/679/20 1703221420354108.pdf]
【解説】
吉田隆浩 岐阜大学救急・災害医学併任講師