カジノ解禁を盛り込んだ「統合型リゾート(IR)整備推進法」の成立から1年が経った。年明けの通常国会には、IRの整備に向けた「実施法案」が提出されるとみられる。ギャンブル依存症の増加を懸念する声に、政府はどれだけ応えたのだろうか。
政府の「特定複合観光施設区域整備推進会議」は7月、実施法案のたたき台となる報告書を公表した。依存症対策に関しては、クレジットカードを利用したチップ購入は外国人客に限って認め、カジノ内のATM設置は原則禁止。日本人客からは入場料を徴収し、マイナンバーカードで本人確認して入場回数制限を行うとした。報告書は「世界最高水準の規制」と謳っている。ただ、利用金額や滞在時間の上限には言及しておらず、現段階では実効性に疑問が残る。
また、カジノ解禁以前の問題として、日本はパチンコ・パチスロによる「ギャンブル依存大国」だ。そのことを強く示唆する疫学調査結果が9月末、日本医療研究開発機構(AMED)の委託を受けた国立病院機構久里浜医療センターによって公表された。
調査は、全国300地点で住民基本台帳から1万人を無作為抽出し、面接方式で質問を実施(回答数5365人)。国際的に最もよく用いられるギャンブル依存症の簡易スクリーニングテスト「SOGS」を用いて過去1年以内の経験を評価。その結果、生涯を通じて依存症が疑われる状態を経験した者の割合は、成人の3.6%(人口換算約320万人)、1年以内では0.8%(同約70万人)となっていた。最もお金を使ったギャンブルは「パチンコ・パチスロ」が最多だった(表)。厚労省研究班が2013年度に実施した調査結果(成人の4.8%、人口換算536万人)とは調査の対象や手法が異なるため、単純比較はできないが、数字上は少なくなったように見える。しかし、3.6%でも他国と比較すれば日本の依存症疑い者は「かなり多い」と言わざるをえない(図)。
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