近年,多発性骨髄腫(multiple myeloma:MM)に対する新規治療薬開発が進み,国内でも治療の選択肢が増えてきました。一方で,多くの併用療法も出てきており,どういった治療が最適なのか,判断が難しくもなっています。特に,自家移植が適応とならない高齢者に対して初期治療をどのように選択すればよいのか,その後の治療をどう考えていくのか,群馬大学医学部附属病院・半田 寛先生にご教示をお願いしたいと存じます。
【質問者】
宮﨑泰司 長崎大学原爆後障害医療研究所原爆・ヒバクシャ医療部門血液内科学研究分野(原研内科)教授
1960年代に開発されたMP[注1]療法は副作用が軽度な治療法であったため,高齢者の標準治療と考えられてきました。そして現在まで高齢者MMに対する初期治療としてMP療法を凌駕する明確なエビデンスを示した治療法は,MPT,VMP,Rd[注2]です。これらの治療法は無増悪生存期間(progression free survival:PFS)ではもとより,全生存期間(overall survival:OS)でもMP療法を上回ることが示されており,またRd療法はMPT療法を上回ることが示されたため,現時点ではVMPもしくはRdが高齢MM患者への標準初期治療と考えられます。さらに最近,SWOG第Ⅲ相試験によってVRd[注3]がRdをPFS,OSにおいて上回ることが示され,新たな標準治療になりうることが報告されました。
高齢者は多様であり,一口に高齢者と言っても,66〜75歳までのいわゆる前期高齢者,75歳以上の後期高齢者,そして85歳以上の超高齢者まで様々な年齢層が含まれています。また,加齢に伴う臓器機能の低下や加齢とともに増加する合併症には個人差があり,そのため高齢者では暦年齢と生物学的年齢のギャップが若年者より大きいです。このような高齢者の治療の選択において重要なポイントは,治療法の奏効のみではなく継続可能性です。有害事象による治療中断は明らかに生存に悪影響を与えるため,中断する可能性の高い治療法の選択は避けるべきです。
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