高齢者の慢性腎臓病(CKD)対策においては,腎臓専門医のほか一般医家,栄養士,看護師など,病診(診診)連携の良否が患者のQOL,生命予後を左右する
慢性透析患者が年々高齢化している中で,CKDの概念が導入され,保存期の対策が望まれる
わが国は既に全人口の25%超を65歳以上が占めており,世界最速で超高齢社会を迎えた。医療分野に限らず高齢者対策においても世界で最初の経験をすることになる。腎不全は加齢現象,栄養状態の悪化を促進させ,種々の合併症(心血管障害,感染症,悪性腫瘍など)を惹起する。高齢者CKD(chronic kidney disease)対策は,腎臓専門医に加えて一般医家,栄養士,看護師などに依存することが大きい。病診(診診)連携の良否がCKD患者のQOL(自立度,通院の可否,サポートの有無など),生命予後を左右し,血液透析の導入に際し延命効果に加えて,患者のQOL,社会・経済的状況などを総合的に評価すべき時期にきている。欧米では,古くより看取りや透析継続中止など高齢者の終末期医療が問題となっており1)2),最近わが国でも,日本透析医学会より維持血液透析の継続見直しに関する提言が発表された3)。
加齢とともに生活習慣病(高血圧,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症など)および悪性腫瘍,感染症などの頻度が高くなる。CKDの発症〔glomerular filtration rate(GFR)の低下〕経過から腎機能は60歳代まで,ほぼ直線的に低下(10年で最大8mL/分/1.73m2程度)するが,それ以降は個人差が大きくなることが知られている(図1)4)5)。20歳でGFRが100mL/分/1.73m2とすると,70歳で60mL/分/1.73m2となる。日本人は体格が小さく(腎臓も同様),20歳で健康であってもGFRは80mL/分/1.73m2程度であり,70歳代になると多くの人たちがstage 3aに入ることになる。しかし,合併症を発症しなければほとんどが80歳代を迎えられるはずである。そのため,GFRの低下は種々の老化現象を促進すると考えられる。CKD stage 5の患者は実年齢に10~15歳加えれば病態が理解しやすい。
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