医療の現場において,ドクターヘリはめずらしいものではなくなってきた。ドクターヘリを活用する意義は,第一に医師・看護師を可能な限り早く患者に届けることで,医療介入をより早期に行うことにある。
ドクターヘリの活動では現場に医療スタッフが赴くが,病院内と同様の医療処置が可能なわけではない。ドクターヘリには除細動器や人工呼吸器などは搭載しているが,診断機器としては,聴診器や超音波診断装置を搭載しているにすぎない。医療器材に関しても,その数や種類は限られている。いわゆるdefinitive careを行うに足る資材・器材が必ずしもそろっているとは限らない。加えて,処置が増えれば現場での滞在時間も増え,definitive careが可能な病院への到着時間はどんどん遅くなってしまう。
ドクターヘリに搭乗して現場に赴く医師は,現場において,診断の面でも治療の面でも,限られた情報と物的・人的リソースの中で,今,この場で必要かつ十分でありながら,最小限の治療を取捨選択し,行っていかなければならない。
病院においてすら,救急医療はこのような側面を持つが,ドクターヘリによる現場での活動は,救急医療を突き詰めた1つの形と言える。ドクターヘリの使用は受け入れる病院があって初めて成り立つが,受け入れる病院のスタッフには,現場活動がこういった厳しい環境で行われていることを理解頂ければ幸いである。
【解説】
山田法顕 岐阜大学医学部附属病院 高次救命治療センター臨床講師